マメガタ峠 下郷ルート
群馬県甘楽郡南牧村 【2003.02.10】
西上州でも人気の高い山「鹿岳」と「四ツ又山」の中間に位置するマメガタ峠。この峠と四ッ又山の南、大天狗の鞍部を結んでの周回を取るこのコースは、四つ星★★★★にするか、はたまた三つ星★★★にするか、かなり悩んでしまった。
★★★★から★までのランク付けは、西上州における山岳サイクリングの峠越えコースをWebMastreの独断と偏見、あるいは好みで決める難易度ランキングだ。
四つ星は、地図から消え去り、実際の道もかすかに残る程度の超難関コース で、「持倉越」「相沢越」そして「矢沢峠」と3つの峠がその栄冠に輝いている。(注:このレポート書いた後、四つ星コースが3つ追加された)数ある峠の中から、この誉れ高い四つ星を獲得するには、ルートファインディングが必要な難易度の高いコースであることはもちろん、さらに横綱のように「品格」が重んじられる。
四つ星審議委員会によると、四つ星昇進には、まず、ルートに関する情報の収集が他のコースに比べて極めて困難であること。そして訪れる人もごく少なく、一般の登山者やマウンテンバイカーを一切寄せ付けない圧倒的な力強さがあること。さらにコース全体の「美しさ」も重要な要素となる。
さて、このコースであるが、2万5千分の1の地形図には落沢からと下郷からのルートが記載されており、下郷ルートに関してはほぼ地形図通りのルートである(落沢ルートは未確認)。
また、群馬の山歩き130選(安中山の会 調査・執筆)や山渓のアルペンガイド(7)奥日光・足尾・西上州等で、それぞれ四ツ又山の頁でルートに関する情報が掲載されいる。人気の高い山であるがゆえ、この情報量の多さが実に惜しいところだ。さらにルート途中の荒れている杉林や、中途半端に点在する赤テープなど、人為的な作用でのマイナス面が影響し、今回は四つ星昇進は見送られた。
しかし、このルートが隠し持つ手強さはかなりもので、土俵際のねばり強さで横綱を翻弄させる名大関のような底力があり、けっしてナメてはいけないのである。心して取り組んで欲しい。
南牧村の大久保の集落に車を置き、登山口から大天狗の鞍部を目指す。途中、マメガタ峠方面と大天狗の鞍部方面への分岐が現れ、分岐に設置されている道標通り右に大天狗の鞍部方面へ行くとすぐに水場が現れ、そこから少し先、このような親切な道標が現れる。「おっ、この道標は山渓のアルペンガイドにも載っていた例の道標ではないか」
ガイドブックでの詳しい情報と、さらに現地ではそれを確信させる立派な道標の数々。西上州の山らしからぬ豊富な情報量はツウな人達には少々不満かもしれないが、西上州部屋の新弟子獲得にはおおいに貢献していることだろう。
スタート地点から大天狗の鞍部まで、ひたすら自転車の担ぎ上げが続くが、例によって一般の登山者に良く歩かれているの道の状態は極めて良好。時間も距離もウォーミングアップに丁度良い。
大天狗の鞍部には、その名の通り「大天狗様」がいる。
何もないシンプルな峠も良いが、やはりこのような峠の住人がいると場の雰囲気は多いに盛り上がるというもの。
峠から南、野々上方面にこのような道が延びている。この先少し行くと杉林になっていたが、それは驚くほど状態の良い道で、まるでホウキで掃き清めたような美しい道だった。 こっちの道は次回のお楽しみにしておいて、我々は下郷へと下りていかねばならない。
登ってきた道を背に、峠からそのまま直下する道と、左へ水平に延びていく道とある。地形図ではそのまま直下している道が記載されているが、どうも左に水平に延びている道が気になる。
しかも誰が付けたのか白いヒモで目印もある。とりあえずその目印に導かれるように、水平の道を進んでみた。最初こそ乗れるが次第に荒れてくる。道なりに行くと最後はものすごい藪でとてもじゃないが、先に進めない。たとえ自転車がなくてもとても行く気にはならないだろう。
中途半端なあの目印はいったいなんなんだ。ここに限ったことではないが、安易に他人の付けたテープやヒモのたぐいはアテにしてはいけないと言うことである。素直に引き返してきて、素直に地形図通り、杉の林の中の道を下りていった。地形図と実際の道が違っていることも多々あるが、この場合は地形図通りで、誰かが付けた目印はとんだくわせもの。色々なパターンがあるから面白い。
間伐が行われていない杉林は、かなり悲しい状況である。 間伐作業を行わないと、木は横に太れず下枝が枯れあがり、もやし状になってしまう。抵抗力のない弱々しい杉の木は風や雪ですぐに倒れてしまう。ここに限らず、MTBで里山を徘徊していると、あちこちの杉の植林帯でこのような状況に出くわしてしまうのである。そういえば昨年の暮れに行った亀穴峠はもっとひどかった。
杉の倒木を越えていく。
さすがにこれが何度も続くとだんだんめげてくる。
倒木越えの連続技をこなしてようやくまともな道に。途中、鍾乳洞があるのでもう少し状況は良いと思ったがアテが外れてしまった。 乗れるようなるとすぐに下郷の集落についてしまう。
下郷の集落から林道を終点までいくと、そこから先はすんなり山道が始まる。杉林の中を快適な歩き(担ぎ)が続くが落沢への分岐が近づくにつれて雰囲気がだんだん怪しくなってくる。
明瞭な道は、突然現れた岩場でとぎれてしまう。さあ、ここからがお楽しみだ。この先、地図読みとルート探索、さらに藪漕ぎと3つ星コースのフルコースが待っている。
岩場をこなすと、落沢からの道との合流地点に出た。この場所で見るかぎり、落沢方面への道も残っているようだ。
合流地点を示すのか定かではないが、このような石柱が立っている。ここには作業小屋の跡があり、無数の一升瓶が散乱していた。何もない山の中では、仕事が終われば酒が唯一の楽しみだろう。散乱する一升瓶にもなんとなく親しみを覚えてしまう。
合流地点からわずかに進んだところに、こんな立派な炭焼きの跡が残っていた。
この辺からは、地形図とコンパスで峠の方向を見定めないとジャストミートはむずかしい。炭焼き跡から沢筋沿いに、なんとなく道がありそうな雰囲気であるが、峠の方向はもう少し左の方向だ。こちらに進むと峠の方向からはどんどんずれていってしまう。
コンパスで峠の方向を再確認して進むと途中、こんなでかい岩があった。
今年はいつになく雪の降る回数が多く、山の雪が消えたかかと思うとまた雪が降る。北斜面はいつまでも雪が消えずに踏み後がわからない。同行のF田さんと手分けして尾根筋に登って回りの地形の状況を見ながら、旧道の場所を探すと言うよりも、この場合、推測するといった感じでルートを決めて進んでいく。 途中、赤テープが中途半端な場所についていたりで、これは相変わらずあてにならない。
この前後が、このルートの最大の勝負所だ。
昔の道がどこにあるのか?ここはひとつ、その痕跡をさがして確信を得たいところ。峠に到達できればそれで良いといえば良いのであるが、やはり旧道派としては、忠実に昔の道を辿りたくなってしまう。
峠に近づくと藪が行く手を阻んでくる。適当に迂回して間もなく峠に到着。
納得いくまで旧道探索を楽しんだので、峠に着いた時は正午をまわっていた。
ここから先、大天狗の鞍部への分岐までは100%乗車の楽しい道が続く。