星尾峠の思い出
群馬県甘楽郡南牧村【1992.09.15】
初めて山岳サイクリングに出掛けたのが星尾峠だった。
星尾峠は、大きな船のような形で人気の高い荒船山の南端にある。長野県側、内山トンネルの手前の内山大橋付近から入り、館ヶ沢を抜けて荒船不動へ。そこから登山道が始まる。このコースの詳細はMTBツーリングガイドブックに詳しく記載されているし、登山口で迷うこともない。途中、ルートファインディングが必要となる箇所もなく、ルートはしっかりしている。 荒船不動からは、適度な担ぎが入る雰囲気のよい道が続き、峠までそこそこの時間で到着する実に程よい峠越えが楽しめるコースだと思う。
ポイントはただ一つ!星尾峠から線ヶ滝を目指して自転車で降りてゆくと、初めての人はほとんど線ヶ滝への分岐に気づかず田口峠方面へと行ってしまうことだ。
峠から降りていくと最初は大きな石があったりして乗りにくいが、徐々に乗りやすくなり、MTB のスピードも上がって絶好調となる。
ちょうどその時に例の分岐地点を通るので、MTBの走りに集中していると、控えめな分岐をやり過ごしてしまう。その先はさらに乗りやすい林道になり、この辺になってようやく「なんか変だぞ」と気づくか、そのまま調子に乗って田口峠まで行ってしまうかのどちらかになる。
我々も分岐を見過ごし林道の途中まで行って気が付いた。NIFTY-Serve自転車フォーラム(注)のツーリングレポートを見ても、星尾峠越えはみんなこの分岐を通り過ぎている。これは自転車特有の現象であり「星尾現象」と言われる。(私が勝手にそう言っているだけ)
2006年1月追記:(注)NIFTY-Serve自転車フォーラム。1992年当時は、ネット上での情報交換と言えばパソコン通信全盛の時期でした。NIFTY-Serve自転車フォーラムの山岳サイクリングのコーナーは、たしか「山紫水明」。1200bpsの弁当箱みたいなモデムでやっていたのですからのどかな時代でした。
初めての星尾越えは輪行だった。内山峠を利用しての周回は、交通量が多くてどうもあまり気乗りしないし、何と言っても星尾峠は輪行が似合う。早朝自宅を出発すれば十分に日帰りできるのだが、初めての山サイで妙に気合いが入っていたのか、山サイ+輪行+野宿という図式が頭の中にインプットされており、なぜかキャンプ道具を背負って1泊2日で行った。軽量化のためテントは持たずに行ったが、キャンプ道具を背負ってMTBに乗るのは予想以上にしんどかった。
野宿の夜
荒船不動の手前、館ヶ沢で野宿。私はシュラフとシュラフカバー(ゴアテックス)を組み合わせ、ポンチョをタープ代りに眠る。相棒シノちゃんはテントのフライを利用してシェルターを作った。
ランタンの明かりの中、山岳サイクリングのデビューを祝ってウィスキーを飲み大いに盛り上がる。
荒船不動でダウン寸前
昨夜ウィスキーを飲み過ぎたせいか、頭がくらくらする。重いザックを背負っていきなり荒船不動手前の急坂を登ったものだから、荒船不動でダウン寸前。冷たい水で顔を洗い、歯を磨き、喉をうるおし、ようやく気を取り直す。昔、陸上部のきつい練習で倒れそうになった時と同じような、実に懐かしい感覚を味わうことができた。
当時のマシンは8万5000円で買ったセンチュリオンのMTB。MTBがブームになり始めた頃のもの。ディオーレDXのブレーキレバーは耕運機のようにでかかった。重く(14kg位はあったように思う)担ぐには気合いと根性が必要だった。