湯沢峠

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群馬県利根郡片品村・栃木県日光市川俣【2009.06.06】

辻まことが月夜に越えた湯沢峠

群馬県の丸沼と栃木県の奥鬼怒温泉郷を結ぶ湯沢峠。辻まことのエッセイ「多摩川探検隊」に納められいる「鬼怒沼山」にこの峠が登場する。辻まことは連れのハロルド君と一緒に丸沼から湯沢峠を越えて手白沢温泉まで歩いている。当時、丸沼迄の交通手段は何だったのか?東京から丸沼までの行程を推測するだけでも楽しいのだが、やはり興味は丸沼から手白沢までの行程だ。二人は午後4時頃に丸沼を歩き始めることになるのだが、季節は秋、すぐに日が暮れる。宵闇迫る中での峠越えだ。手白沢の宿に着いたのは夜の9時。さすが、この界隈をウラヤマと称して歩き回っていた辻まこと。夜でも余裕の峠越えなのだろう。さて平成21年の湯沢峠はどんなものか、いつか自転車を担いで越えてみたいと思っていた。

富士見峠集中ランの計画

「2009年6月7日 奥日光 富士見峠 午後1時集合」
山サイ研の6月の集中ランは、奥日光の富士見峠だ。おお!これは絶好の機会。湯沢峠を越えて一泊。翌日は野門側から担ぎ上げで富士見峠へ。峠を越えて日光側に降りる。余裕があれば足尾まで走ってわたらせ渓谷鉄道で帰ろうか、日光駅からのんびり居酒屋列車もいいなあ、と思いはずんずんと膨らんでいくのであった。

さて、悩むのは1日目。沼田迄は輪行し、その先をどうしようか。沼田から走り始めると峠までは、かなりの標高差でありそれなりに距離もかさむ。地形図を見ては考え、プロフィールマップを作っては悩み、インターネットで検索しては考えが揺らぐ。うんうん唸りながらも楽しい机上の山岳サイクリングが繰り返えされる。

雨の沼田駅

2009年6月6日土曜日。上越線の車窓から、コントラストが日増しに強くなっていく木々の葉や勇壮な利根川の流れを眺めつつも、気になるのは雨の様子。自宅を出る時からカッパを着ようかどうしようかという微妙な降り方だったのだが、その後、時折強くなるぶんでもいっこうにやむ気配がない。

雨の中、沼田から丸沼までブロックパターンのタイヤを付けたMTBで、いつになく軽量化に気を配ったとはいえ、1泊2日の宿泊まりの装備一式が詰まっているザックを背負ってとなると、やはりちょっと厳しいか。
さんざん迷ったが、沼田駅に着いた時点で雨だったら片品村の鎌田までバス輪と決めた。

沼田駅着7時08分。改札口を出ると小降りになったとはいえ相変わらずの雨だ。実はこの時、雨だったことで救われたのだったが、そんなことはこの時点で知る由もない。

尾瀬方面へのバスは7時20分に出る。朝食用に駅前のコンビニで手作りのおにぎりを買い、若干不本意な気持ちをいだきつつ輪行袋とともにバスに乗り込んだ。それでも乗ってしまえば楽ちんなのは言うまでもなく「移動距離もさることながら、高度を標高331mから700mまで上げてくれるなんて、ああ、バスってありがたいなあ」と、自転車乗りでなければわからないありがたさで、運賃1600円を支払った。

湯沢峠までの間、ロスタイム60分

丸沼から川俣温泉まで山間部の地図はいつものように完璧だ。それ以外は、かなり古い1995年版「山と高原の地図・日光」に載っている25万分の1の日光周辺図を利用する。自動車が走る一般の道なんだからこれで充分のはずなのである。

鎌田バス停鎌田のバス停で自転車を組み立ててから地図を見る。地図には鎌田の文字が小さく記載されており、丸沼へはこの「鎌田の文字の所」から右に道路が延びている。
雨がやんで薄日も差す状況にすっかり気を良くした私は「鎌田バス停の場所=地図上の鎌田の文字の場所」だと思い込み、なんのためらいもなく、地図のパターン通りバス停の前の道路を東に走り始めた。今思えば、なんでこれが国道122号なんだと思うのだが。

どうも様子が変なのですぐに確認すればいいのに、大雑把な地図しかないものだから気になりながらも進んでしまう。途中、地元の人に聞き、そこでようやく自分の愚かさを知るのだった。いつものことながら「思い込み」とはかように恐ろしい。
鎌田のバス停を8時45分にスタートして、素敵なオプショナルコースを40分ほど楽しみ、尾瀬大橋着が9時25分(…って普通に走ればバス停から1〜2分・涙)。この40分が後から漢方薬のようにじわじわと効いてくるとは。

日頃の行いか、スーパー晴れ男の面目躍如か、雨は降りそうで降らず、暑すぎず寒すぎず絶好のサイクリング日和の中、意気揚々丸沼を目指す。

丸沼湖畔 丸沼湖畔に11時05分着。湖畔亭にて、とろろうどんの昼食。ここでも食べている間だけ雨が降っていた。11時50分、再び走り始める頃になると雨がやむ。

倒木 湯沢峠まで実際に自転車を担いで歩いてみると、訪れる人も少ないのか、荒れ気味で行く手を阻む倒木も多い。

ルートはわかりにくいことはないが明瞭というほどでもなく「これで霧でも出たらいやだなあ」と思いながら登っていった。ましてや辻まことと連れのハロルド君のように夜間になんて、とてもとても。

湯沢峠13時37分湯沢峠着。

峠から北に派生する尾根は深い笹藪に覆われていた。北側のあまり遠くない場所で登山者らしき数人の声が聞こえる。こちらに向かってくるようだ。すぐに立ち去ればいいものを、藪こぎで現れる人はどんな人達か興味が湧いてしばらく停滞した。結局、登山者は現れず、14時に奥鬼怒温泉郷へと降りていった。ここで20分、そしてしょっぱなで40分。合計60分のロスタイム。

それでも日光沢温泉迄は予定通り

まだ余裕のはずであったが、日光沢温泉まで登山地図に記載してある所要時間は約2時間。予定でいけば日光沢着が16時だ。途中、アクシデントで時間を取られでもすると、やや微妙な時間になってきた。幸いにも奥鬼怒側は、丸沼側と比べて状況もよく歩きやすい。それでも乗れそうで乗れないのがはがゆいが、贅沢は言えない。

根名草沢 峠道を降りて最初の沢を渡る。地図によると根名草沢とある。後日、最新の山と高原の地図を見るとここは「迷いやすい場所」と明記してあった。実際に現地に立つとその通りで、慎重に目印を辿れば問題はないが、ここでコンパスと地形図でしっかり進行方向を確認しておくと安心だ。この辺は、気持ちに余裕がないとちょっといやな場所かも知れない。

そういえば前述の「鬼怒沼山」でもこんな一文がある。

谷底へおりたらまっくら、河から対岸への登り口が崩れていてちょっとまごついた。

要注意の場所には違いない。ちなみに1/25000地形図では、三平峠と川俣温泉の丁度境目のあたりなので、事前に2枚の地形図をコピーして貼り合わせておくと見やすい。 山と高原の地図等の登山地図を用意する方が手っ取り早いかも知れないが。地形図でも把握しにくい箇所である。

沢を渡り、鬱蒼とした樹林の中を行く。思った以上に距離が長く感じられるのは、ロスタイムの60分が効いてきているためか。厳しいアップダウンは少なく、MTBで乗れば乗れそうな所もいくらかはあるのだが、無理に乗車してアクシデントの確率が高くなるくらいなら乗らないのが得策というもの。単独で、しかも時間を気にしている時はなおさらだ。

途中、オロオソロシノ滝展望台付近で、2名の登山者と出会った。丸沼から初めての人である。「えっ、何でこんなとこに自転車が!?」と例によっていつもの展開。かなり驚いていたようだ。にこやかに会話を楽しんで先を急ぐ。

日光沢温泉16時00分着。ほぼ予定通り。あとは林道と一般道で、いわゆる世間一般のサイクリングになる。ようやくひと安心。当初「湯沢峠はやさしいはずの峠であり、丸沼迄走れば、あとは余裕の行程かも」なんて思ったのはとんでもないことだった。

女夫淵温泉から先は予想外の展開に

ダートの林道をひた走り女夫淵温泉に着いたのが16時37分。とりあえず宿に一本電話を入れておく。さてここからは舗装のまともな道。もう着いたようなものかと思いきや60分のロスタイムが「こんなはずでは」の種を立派に育ててくれていた。

バス輪して体力を温存したつもりではあったが、さすがに疲労がたまってきた。それでも下り基調なのがありがたい。川俣大橋を渡り、少し上り返して川俣の集落に入ったところで前輪がスローパンク。宿までもう少し。チューブを変えるのも面倒なので、空気を入れながらだましだまし走る。

立派なトンネルを抜けると大きな橋が現れた。
今走っている道は、同じ「山と高原の地図」でも25万分の1の周辺図ではなく詳細な5万分の1の方であり、車道はわかりやすく黄色で記してある。
地図の通りだとすると現れた橋は「瀬戸合橋」のはずだ。しかし周りの地形と地図を照らし合わせてもどうもしっくりこない。今朝の失態もあるので、確認のために欄干に刻まれた橋の名称確認する。

「萱峠大橋」

「萱峠大橋って、瀬戸合橋じゃあないの?」
地図上には、どこを見ても萱峠大橋の記載などはない。 う〜む、まさかこんな一般道でわけ解らなくなるとは。 まったくもって予想外の展開である。

もしあの時、雨がやんでいたら・・

陽の長い季節ではあるが、山中では暮れるのは早い。あたりは闇がせまっている。行き交う車も極端に少ない。
一番避けたいのは、野門への入口がわからずその先に行ってしまい、再び引き返す事態だ。引き返すには当然上り坂。疲労が蓄積している中でこれは肉体的にも精神的にもかなり辛い。しかし、どうなるかわからない。今後の展開に備えて、穴のあいたチューブの交換を手元が見えるうちにやっておこうとザックをおろす。

リムからタイヤをはずしてチューブを交換。いつものように作業は進み、最後に空気を入れればオッケー。と、空気を入れるが、どうも変な感じ。シュコシュコといくらやっても空気が入らない。おかしいなあと空気入れをいじったらピストンが抜けてしまった。この瞬間をなんと表現してよいものか。空気入れが壊れた経験は初めてである。

あと1時間早ければ、こんな事態でも「これはネタになる」なんて、まだ気持ちにも若干の余裕があるだろうが、場所不明確・疲労困憊・闇迫るというこの状況で空気が入れられないというのは正直かなりきつい。
焦る気持ちをおさえ、水でも飲んでひと呼吸。あえて少し間をおく。この間の長いこと長いこと。気を取り直して分解してしまった空気入れを慎重に組み直す。さて今度はどうか。ようやく空気が入って元気に走れる状況に戻った。

再び宿に電話を入れて状況を確認する。どうやら新しくできたバイパス走っているようだ。この道は、持参した地図では古すぎて載っているはずもない。宿の若女将に教えられた通り、先を進みようやく野門への入口に辿り着く。ここから野門まで再び上り坂だが、さすがにここまで来ればどうにでもなる距離だ。18時15分、野門の一乃屋に到着。宿に着いたとたんに強い雨が降ってきた。まるで私が宿に着く迄待っていてくれたかのようだ。

沼田駅で雨がやんでいたら、今頃はどこを走っていたことか。考えただけでも恐ろしい。降る雨のおかげでバスに乗り、行動中は一切降られず、最後は降るのを少し待ってもらう、まさに雨様さま。しかも「こんなはずでは」は山道ではなく一般道だなんて。スゴイ一日であった。

1/25,000地形図 丸沼・三平峠・川俣温泉

翌日の富士見峠へ

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